2022.02.27
コラム

【シリーズ:廃プラをエネルギーに!②】ケミカルリサイクルの実現性(レポート)

シリーズでお伝えしている”水素ホテル”の取り組み。前回はその”水素ホテル”こと「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」について詳しくご紹介しました。
【レポート】<シリーズ①>廃プラをエネルギーに!次世代の水素ホテルとは?
今回はシリーズ第2回目として、どのようにして”水素ホテル”で使っているエネルギーが生み出されているのか、その裏側をご紹介いたします。

まず、エネルギーのもととなる水素は、廃プラスチックがリサイクルされてつくられています。自治体などで回収された廃プラスチックをもとに、水素製造設備で水素を生成するのです。そして、この技術を可能にしているのが昭和電工株式会社 川崎事業所のKPRです。

【KPR(KAWASAKI PRASTIC RECYCLE)】
KPRは、昭和電工株式会社 川崎事業所におけるプラスチック原料化事業の略称のことを言います。
使用済みプラスチックを燃やさず、ほぼ全量、製品として蘇らす「ケミカルリサイクル」の手法を用いています。
KPRのリサイクルの一連の流れをご紹介します。まず、廃プラスチックから水素を生成します。そこに空気(窒素)を加えアンモニアを製造します。製造されたアンモニアは肥料やアクリル系の繊維等、様々な工業製品の原料となり、廃プラスチックの再利用へとつながるのです。

細かなプロセスはというと、廃プラスチックは回収された後粉砕などの過程を経て、成形プラというプラスチックの固まりに変化します。その成形プラを熱で分解して気体にすると、水素と二酸化炭素が発生するのです。(出典:昭和電工株式会社パンフレット)

そしてこの後、通常は気体になった水素に空気(窒素)を加えてアンモニアを製造しますが、”水素ホテル”で使用しているエネルギーはこの水素をそのまま活用しているのです。
廃プラスチックからエネルギーができるというだけでも画期的な技術ですが、細部まで環境に配慮された仕組みになっています。
廃プラスチックを熱で気体に分解する工程も、プラスチック自体の熱量で反応が進むため、燃料が必要ないのです。
また、水素とともに発生した二酸化炭素も、大気に放出されることなくドライアイスや液化炭酸ガスとして利用されています。そのほかにも、発生する金属なども回収して有効活用しています。
このようにして、廃プラスチックからほとんどゴミを出さずに、エネルギーの元となる水素を創り出すことができるのです。

【昭和電工株式会社 川崎事業所 プラスチックケミカルリサイクル推進室】

この度、この画期的なリサイクルを行っている、昭和電工株式会社 川崎事業所のプラスチックケミカル推進室の安倍様、栗山様、高山様、橋詰様にお話を伺いました。

川崎事業所はもともと肥料を作る事業所として始まりましたが、現状はアンモニアの生成をはじめ医薬や農薬など約100種作成しているそうです。

廃プラスチックによるケミカルリサイクルは、2003年より本格的にプラントを動かし始めたとのことで、その背景には1997年に施工された容器包装リサイクル法が関係しています。埋め立て処分場の土地不足が深刻化する中、家庭ごみの約60%が容器包装であることが判明した中、この容器包装をごみとして処分せずに、新しい資源として活用できるようにするためにできた法律です。

国としてプラスチックのリサイクルが推し進められている中、川崎事業所でKPRが本格的に始動したのです。

また、ケミカルリサイクルの特長は、廃プラスチックをまとめてリサイクルできる点です。家庭のプラスチックごみは汚れがついていたり、様々な種類があるなど、分別が難しいのが問題点ですが、ケミカルリサイクルはそのまま分けずにリサイクルすることができるのです。

【水素からエネルギーに】
”水素ホテル”で使用されているエネルギーを生み出している水素は、廃プラスチックから非常にエコな工程を経て作られていることがわかりました。
では、この水素はどのようにしてエネルギーに変わるのでしょうか。

昭和電工株式会社 川崎事業所で生成された水素は、ホテルまで引かれたパイプラインを通って移動します。そして、ホテルの横に設置された燃料電池によって電気と熱エネルギーに変わるのです。

この燃料電池は東芝エネルギーシステムズ株式会社が開発した、純水素燃料電池システム「H2Rex™」です。水の電気分解と逆の化学反応によって発電します。東芝エネルギーシステムズ株式会社の砂田様にお話を伺ったところ、燃料電池の中にスタックというものがあり、そこに空気と水素を送り込むと化学反応が起きます。すると水ができて、その際に電気と熱が発生するという仕組みです。水しか発生させない非常にエコな発電方法です。

この方法によって発電された電気は”水素ホテル”で使用され、ホテル全体で使われる電気の約30%を賄っています。また発生した熱は、お湯を沸かすエネルギーとしても一部活用しています。

【最後に】
”水素ホテル”こと「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」で使われているエネルギーが作られるまでに、多くの過程を経ていることがわかりました。
そしてどれも、今後益々対策が急務になっていくであろう環境問題の解決につながる、重要な技術であると感じました。

2回のシリーズに渡って紹介した”水素ホテル”の取り組みは、1回目でお伝えしたとおり、環境省の実証事業として行われていました。この実証事業は2022年3月をもって終了しますが、今後はホテル独自の取り組みとして継続予定とのことです。

このような環境問題解決への取り組みが、今後より広がっていくためには、私たち一人ひとりもできることから実施していかなければいけません。例えば環境問題に積極的に取り組んでいたり、技術開発に励んでいる、そのような企業の商品やサービスを選択することも一つの方法です。

そして是非、”水素ホテル”こと「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」へいつの日か足を運んでみてはいかがでしょうか。

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