- 2025.03.12
- コラム
ヒートショック予防のために住宅の断熱化を検討しよう
「寒い家は危険!家庭で起こる死亡事故の実状(2023年版)」では、家庭内の不慮の事故のうち、冬期のヒートショックによる死亡と推測されるものが4割以上であることをお伝えしました。ヒートショックに至らないためには、冬も暖かく過ごせる住宅で暮らすことが予防策の一つとなります。
この記事では、今のお住まいを断熱改修する際のポイントをお伝えしていきます。
なお、新築・建て替え・スケルトン改修(土台や柱のみ残す大規模改修)の際には、断熱性能・気密性能の高い住宅によって健康で快適な温熱環境を実現できます。
くわしくは、ロングライフ・ラボの「命と健康を守れる住まいを目指して」をご覧ください。
断熱改修の優先部位は「窓」
断熱改修を検討する場合、優先して改修すべき部位は、どこでしょうか?
平成4年省エネ基準(断熱性能等級3、UA値1.19相当)の住宅で、熱の出入りを部位別に見ると、窓・ドアなどの開口部からの出入りが最も大きいことがわかります。次いで、外壁(外気に面している壁)、床となります。
平成4年省エネ基準の住宅で、冬、部位ごとに熱の逃げる割合
出典:一般社団法人ロングライフ・ラボ
※算出根拠:冬の熱損失割合を、自律循環型住宅モデルにおける断熱等級3(UA値1.19)相当の仕様にて、(株)シーピーユー社「建もの燃費ナビ」にて算出。
この中で最も改修しやすく費用対効果が見込めるのが窓です。壁を壊さずに改修できる工法が複数あるため、住まいながら1日~数日の工事で断熱化することができます。
※平成4年省エネ基準は義務化されていないため、平成4年に建てられた住宅でも壁・床・天井が無断熱であることも考えられます。その場合でも、窓からの熱損失が35%(外壁・床 計23%)となり最も熱の出入りの大きい部分となります。
窓が無断熱の住宅は全体の約6割
総務省の統計局では、5年に一度、「住宅・土地統計調査」を公表しており、窓の断熱状況も2003年以降、調査対象となっています。
窓の断熱化の状況 2003年~2023年
グラフは、総務省統計局 2003年~2023年の「住宅・土地統計調査」結果より
一般社団法人ロングライフ・ラボが作成。
2003年時点では79.8%の住宅で窓が無断熱となっており、2023年時点でも63.9%と、過半数の住宅の窓が断熱されていないことがわかります。ヒートショックによる死亡者数が減らない要因の1つに、住宅の断熱化が大きく進んでいない現状があると推測されます。
今住んでいる家の「窓」をチェック!
そもそも既存住宅の断熱性能を確認するにはどうしたらいいでしょうか?
すぐに確認できるのは「窓」です。天井、壁、床下の断熱材は、建物が仕上がっている状態では確認できませんが、窓が断熱化されているかは目視で確認することができます。
「ガラスが1枚ガラスではなくペアガラスになっている」または、今ある窓の内側に「内窓」が付いていれば、「無断熱ではない」ということがわかります。
ペアガラスの窓(画像引用元:三協アルミ WEBサイト)
内窓(画像引用元:三協アルミ WEBサイト)
壁を壊さずに工事ができる窓改修工法3つ
壁を壊さずに工事ができる窓改修工法は大きく3つあります。それぞれにメリットデメリットがありますので、費用や使い勝手から検討しましょう。
2025年現在、内窓設置やカバー工法には国の大型補助金が活用できます。
よく使う部屋のみの「部分断熱改修」
使う頻度の高いリビングや寝室などの居住スペースのみ、窓・天井・壁・床をすっぽり断熱改修し、全体改修よりもコストを抑えて家の中を暖かくする「部分断熱改修」という考え方もあります。
国土交通省では、2020年~2022年に「部分断熱等改修実証事業」を実施し、事例集を公開しています。
建物状況の確認を行い最も適した工法を検討するため、窓だけの部位改修よりも予算や工数がかかりますが、家族の健康を損なわないための暖かい断熱ゾーンを作ることができます。
部分断熱改修例
(画像引用元:部分断熱等改修実証委員会「部分断熱改修の進め方と効果」 )
まとめ
- ヒートショック予防のための断熱改修の優先順位1位は「窓」。
- 窓が無断熱の住宅は全体の約6割。
- 窓の断熱状況は、「ペアガラス」か「内窓」でチェック!
- 壁を壊さずに窓改修できる工法が3種類ある。
- よく使う部屋のみ断熱改修する「部分断熱改修」という方法もある。