- 2020.06.15
- コラム
【シリーズ:食品ロス①】日本の現状から見える問題
食品ロスという言葉を知っていますか?最近ニュースなどでも取り上げられることが多く、耳にする機会が増えた方も多いと思います。食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食材のことを表しており、日本ではフードロスという言葉がほぼ同じ意味で使われています。
今、世界で生産されている食料は約40億トンですが、このうち約1/3にあたる約13億トンが食品ロスとして廃棄されてしまっています。
世界には飢餓で苦しむ人が8億2,100万人おり、全人口のおよそ9人に1人が苦しんでいることになります。世界で生産されている約40億トンの食糧がすべての人に平等に行きわたれば、実は十分に足りるのです(出典:国際連合食糧農業機関(FAO))。
食べるものが無くて苦しんでいる人がいる一方で、まだ食べられるものを捨ててしまっているこの現状は、一刻も早く改善していかなければいけません。
また食品ロスは飢餓問題だけではなく、環境問題にも大きく関わっているのです。
食品が作り出される過程や、それを処分する際に排出される温室効果ガスの量は年間36億トンにも上り、世界の温室効果ガス排出量の約8%を占めています。このことから、食品ロスは地球環境に対して大きな負荷を与えていることがわかります。
そこで、ロングライフジャーナルを通して”食品ロス”の特集をお伝えします。
第1回目は「日本の食品ロスの現状」について紹介します。
【日本の食品ロスの現状】
では早速、日本の食品ロスの現状を見ていきましょう。
平成29年度の調査によると、612万トンの食品ロスが発生したと推測されています。
612万トンというと途方もない数字ですが、目安としては東京ドーム約5個分の換算になり、事業者からは328万トン、家庭からは284万トンという内訳になっています。
本来であれば食べられたはずの612万トンの食品が、何らかの理由で捨てられてしまっているのです。日本人1人当たりに換算すると、1年で48キログラムとなり、1人が毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているのと同じ量になります。(参考:農林水産省 食品ロスとは)
平成24年度からの6年間の推移をみてみると、家庭で発生する食品ロスは少しずつですが減少傾向にあります。一方でレストランや流通店など、いわゆる事業者から発生する食品ロスはほとんど横ばいの状態です。食品ロスについてはメディアでも取り上げられる機会が増えたこともあり、対策をとる企業も増えてきているもののまだ十分な結果が出ているとは言えず、より力を入れた対策が迫られています。
【食品ロスのリサイクル事情】
日本の食品ロスのリサイクル事情について考えていきたいと思います。
食品ロスも一部はリサイクルや再生利用されていますが、一体どれほどの割合でリサイクルや再生利用されているのでしょうか。残念ながら、まだ食べられるのに捨てられてしまった食品ロスだけのリサイクルや再生利用率は算出されていませんでした。しかし、食品ロスと合わせ、食べ物の皮や種、骨などの食べられないものや、有価物(買い取ってもらえるもの)などを合わせた食品廃棄物全体でのリサイクル、再生利用率は算出されていたので、そのデータから考察していきます。
まず、食品廃棄物の平成29年度の合計(事業系と家庭系の合計)は2,550万トンでした。その中に、まだ食べられるのに捨てられてしまった食品ロスの612万トンも含まれています。食品廃棄物2,550万トンのうち、減量(脱水や乾燥、発酵など)やリサイクルが実施されたのは1,495万トンと、全体の約60%に留まっており、残りの40%は焼却や埋め立てで処理されています。焼却や埋め立ては二酸化炭素の排出に繋がっており、環境破壊の要因となっているのです。
また家庭から発生する食品廃棄物の再生利用率はたった7%にとどまり、ほとんどがリサイクルされていないのが実情です。この食品廃棄物の中にまだ食べられるのに捨てられてしまった食品ロス分も含まれることから、家庭ででた食品ロスのほとんどが焼却や埋め立てという方法で処理されています。食品ロスはどちらかというと、レストランや流通店などの企業で発生する方が注目されがちですが、家庭で発生した食品ロスはその再生利用率の低さから、環境に大きな負担をかけているのです。
上記のリサイクル率は、食品廃棄物全体での数値のため、食品ロス分のみの正確なリサイクル率はわかりません。ただし、食品ロスとして捨てられてしまったものの一部がそのまま処分され、地球環境に負荷を与えていることは事実です。少しでも食品ロスを減らすことで食品廃棄物全体の量を減らし、環境負荷を減らしていくことが重要であると考えます。
【最後に】
食品ロスが飢餓問題や環境問題に大きく関わっていることを理解していただけたでしょうか。問題を解決していくためには、ひとり一人が食品を無駄にしないよう心掛け、毎日の生活でできることから取り組んでいきましょう。次回は食品ロスが起こる理由や事例についてお伝えします。
<ロングライフ・ジャーナル【シリーズ 食品ロス】>
■その②「日本の消費習慣と原因」はこちら
■その③「アプリやサイトであなたも食品ロス削減に貢献!」はこちら