2024.11.22
コラム

寒い家は危険!家庭で起こる死亡事故の実状(2023年版)

厚生労働省人口動態調査結果(2024.9.17発表)をもとに、私たちの暮らしの中に潜む『家庭内の不慮の死亡事故の実状』をお伝えいたします(毎年、最新データにて更新)。

家庭内事故による死亡者数は毎年増加

2023年の家庭内の不慮の事故による死亡者数は、東日本大震災により多くの方が家の中で亡くなった2011年に次ぐ16,050人となってしまいました。交通事故による死亡者数は年々減少しているため、その差は約6倍に拡大しています。

■家庭内事故および交通事故による死亡者数の推移

溺死・溺水で亡くなられる方が最も多い

亡くなられた要因を見ると「溺死・溺水」が全体の43.3%と最も多く、2010年の30.5%、2000年の29.5%と比較しても増加傾向にあります。なお、2000年に31.2%(3,475名)と最大要因であった「窒息」は2023年には21.7%(3,477名)と、割合としては減少しています。誤嚥による窒息死への周知が広まった一方で、「溺死・溺水」に至る「ヒートショック(急激な温度変化による健康被害、後述)」についての周知と対策が進んでいないと推測されます。

■家庭内事故およびによる死亡者数の推移

寒い時期に増加することからヒートショックと推測される

溺死に至る要因はいくつか考えられますが、77.2%は家庭内で起こっていること、冬期にかけて増加することから、冬期の浴室で溺死で亡くなられている方が多いことがわかります。

■悪性新生物および溺死による死亡者数の月別グラフ

では、冬期の浴室でどのような現象が起こっているのでしょうか?
下の図は、断熱が不十分な住宅での入浴時の血圧変動イメージです。

あたたかい居室から寒い脱衣室・浴室に移動すると急激な温度変化により血圧が上昇します。血圧変動により脳や心臓に負担がかかって意識を失い、浴槽内で溺死に至ってしまうと推測されます。こうした温度変化による健康被害は「ヒートショック」と呼ばれています。
急激な血圧の変動を抑えるためには、居室と脱衣室・浴室の室温差を少なくすること、脱衣室・浴室を暖かくすることが大切です。

熱中症対策だけでなくヒートショック対策も

近年、熱中症の危険性については周知が進み、夏場に冷房を使うことや炎天下の外出は控えるなどの対策が浸透してきています。夏期の天気予報では熱中症の危険度が示されるようにもなってきました。それでも家の中で熱中症で亡くなられた方は2023年は660名となっており、引き続きの周知が求められます。
一方、ヒートショックで亡くなられたと推測される方は6,354名と熱中症で亡くなられた方の約9.6倍と更に多く、熱中症だけでなくヒートショックにも更なる周知と対策が必要です。

■浴槽内および熱中症での死亡者数の推移

65歳以上が全体の約9割

家庭内事故で亡くなられる方は、年代別にみると65歳以上の高齢者が全体の88.8%と前年と同様に高い構成比となっています。特に80歳以上の方は9,237名と、全体の57.6%を占めています。
亡くなられた要因は、前述の全年代と同様に「溺死・溺水」が最も多く、65~79歳で46.0%、80歳以上で46.3%となっており、高齢の方への入浴時のヒートショック対策が喫緊の課題と言えます。

■年代別 家庭内事故死者数(2023年)

それでは、ヒートショックを防ぐために私達には何ができるでしょうか?次回は、具体的な対策についてご案内いたします。

※社会課題を定量的にお伝えするために、客観的なデータとして「死亡者数」を利用させていただいたことをご理解ください。家庭内事故、交通事故、悪性新生物により亡くなられた方にご冥福をお祈りさせていただくとともに、ご家族の方々にお悔やみ申し上げます。

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