寒い冬、気温差によるヒートショック(急激な血圧上昇降下)で意識を失い、浴槽内で亡くなられる方(溺死者)が年々増え続けています。
東京都健康長寿医療センターの研究報告(2014年3月26日発表)によると、浴槽で心肺停止に陥り、救急搬送後亡くなられた方を含めると、ヒートショックで亡くなる方は年間約1万7000人と推計されています。これは、2018年の交通事故死亡者数3532人(交通白書調べ)の約5倍にあたります。
では、なぜヒートショックが起きてしまうのか?その原因は「家の寒さ」にあります。実は、ほとんどの日本の住宅は「省エネ住宅」とうたっていても、命と健康を守るには断熱性能が足りません。
しかし、現在の新築住宅でも家の寒さが原因で、ヒートショックや健康被害が起きる可能性があることを生活者にはほとんど知らされていません。加えて、命と健康を守れる断熱住宅の取組みに消極的なハウスメーカーや設計事務所も多いのが実状です。
私たちは、こうした世の中に認知されない「日本の省エネ住宅」の実状や課題をもっと多くの人に知ってもらい、命と健康を守れる住宅を選んでいただくための情報提供活動を行っていきます。
そして、将来的には「命と健康を守れる断熱基準」が法制化(適合義務化)されるよう推進していきます。
ロングライフ・ラボでは、今後以下の活動を予定しています。
専門家によるセミナー(講演)を定期的に開催し、「住宅選びで後悔しないための“断熱性のモノサシ”」を提供します。ゲストとのパネルディスカッションによって進行するシンポジウムや一般の方に省エネ意識を高めてもらうためのワークショップも企画していきます。
「セミナーのテーマに合った講師を呼びたい」「テーマ自体から提案してほしい」など、行政や教育機関などの諸団体、あるいは法人向けに、企画の立案や講師の派遣、セミナーの運営まで総合的にサポートします。
ロングライフ・ラボが定めた「命と健康を守れる断熱基準」をクリアした「真の省エネ住宅」の実績リストをWeb上に公開。住宅会社や団体などの垣根を超えて、生活者に情報提供を行います。
今後、下記のテーマに沿ったセミナーやシンポジウムを開催します。
東京大学大学院前研究室の研究結果によると、「間取り」と「耐震」は、初期段階から重要視し、住んでからも満足する結果となっています。一方、「室内温熱環境」は、初期段階で重要視し、設計者から提案をもらい採用したにもかかわらず、満足度は低く後悔しているのです。
これは、多くの設計者は、断熱に関する知識が不足していて最適な(住んだ人が満足できる)室内温熱環境を提案できてないと推測されます。
また、住宅は比較検討の尺度が分かりづらく、生活者はブランドやデザイン、価格、設備といった表面的な要素だけで購入してしまうのも原因の1つと言われています。
家庭内の事故による死亡者数は「階段やバルコニーから落ちる」「火災」などが多いと思われがちですが、最も多いのは「浴槽内での溺死」です。寒い冬、気温差によるヒートショック(急激な血圧上昇降下)で意識を失い浴槽内で溺死してしまう方が多いのです。
※厚生労働省 2017年人口動態調査結果をもとに作成
体が冷えると、免疫力が低下し、健康障害を起こしやすくなると言われています。
例えば、都道府県別のガンによる死亡率と年最低気温の関係を調べてみると、冬の最低気温が約15℃の沖縄県のガン死亡率は他都道府県に比べて極端に低いのが分かります。
このことから、冬の寝室が15℃以下にならなければ、免疫力が低下しないのではと推測できます。
近畿大学の岩前教授は、断熱性能の低い家から高い家に転居した人たちの健康調査を実施しました。その調査によると、当初持っていた疾病やアレルギーなどの多くが改善され、断熱性能の高い家ほど、その効果が顕著に表れる結果となりました。
図中、「ちょこっと断熱」と「まあまあ断熱」を比較するとほぼ横ばいなのに対し、「しっかり断熱」に引越しをすると顕著な改善がみられました。
このことから、住宅の断熱性能が居住者の健康状態と相関関係にあることは推測できます。
※表現の一部に、「死亡者数」の統計データを利用させていただきました。亡くなられた方には、心よりご冥福をお祈りいたします。
少しでも寒い家が原因で亡くなられる方を減らすために客観的なデータとして活用させていただいたことをご理解ください。
真の省エネ住宅とは、「省エネルギー(ルームエアコン1〜2台)で冬、家中(リビング・寝室・洗面所・浴室・トイレ・玄関ホールなど)が20℃を下回らない住宅」のことを指します。また、夏も省エネルギーで家中を涼しく保ちます。
エネルギー消費量を減らしながら、日本の家から『寒い』をなくしたい。
それがロングライフ・ラボの想いです。
断熱不足で後悔しないための2つのモノサシを紹介します。
数値が小さいほど性能が良いことを示します。国の基準が定める断熱等性能等級の等級6以上が必要で、例えば 東京23区内ですと、0.46以下となります。
数値が小さいほど性能が良いことを示します。C値の許容範囲は、1.0未満。
気密性能が悪いと、「すき間から熱が逃げる」だけでなく、「計画的に換気ができない」「床面付近はいくら暖房しても寒い」「上下の温度差が無くならない」などの不具合が生じます。
ロングライフ・ラボが推奨する「真の省エネ住宅」の住宅性能値
『国が定める断熱等性能等級6以上』かつ『気密性能C値1.0未満』を推奨
UA値:熱貫流率(W/(㎡・K))、C値:気密測定実測値(㎠/㎡)
省エネ地域区分(※1) | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
UA値(以下) | 0.28 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | 0.46 | 0.46 |
C値(未満) | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 1.0 |
省エネ地域区分(※1) | ||
---|---|---|
UA値(以下) | C値(未満) | |
1 | 0.28 | 1.0 |
2 | 0.28 | 1.0 |
3 | 0.28 | 1.0 |
4 | 0.34 | 1.0 |
5 | 0.46 | 1.0 |
6 | 0.46 | 1.0 |
7 | 0.46 | 1.0 |
8 | 0.46 | 1.0 |
※1:平成28年省エネルギー基準において区分される1地域から8地域までを示す。
※2:他にも重要な“モノサシ”(暖房負荷等)はありますが、大きな失敗をしないための優先順位が高い2つを定めました。
※3:推奨する基準は、現時点での最低基準と考えます。今後の状況によってグレードアップする場合があります。
※4:断熱性能を向上させると、より省エネでより快適な住空間を実現できます。
※5:C値(相当隙間面積)は「小数点第2位を四捨五入し、小数点以下1桁で表す(JIS A2201)」と定められており、これに準じて表示しております。
ただし、実測値0.01~0.04の場合は0.0と表しますが、全く隙間が無いということではありません。